テレビや映画で見ない日はない人気俳優の小栗旬さん。現在は所属事務所「トライストーン・エンタテイメント」の社長としても活躍しています。
そんな小栗旬さんが、何年も前から熱い想いを持って取り組んでいる「ある巨大プロジェクト」をご存知でしょうか?
それが、「芸能人(俳優)の労働組合」の設立です。
「え?芸能人なのに労働組合?」「そもそも組合って何のために必要なの?」と疑問に思う方も多いはず。
この記事では、日本の芸能界が抱える問題点や、小栗旬さんが社長になってまでこの改革に奔走する理由を、初心者向けにわかりやすく解説します!
そもそも「芸能人の労働組合」ってなに?

一般企業で働く会社員にとってはおなじみの「労働組合」ですが、芸能界における組合とはどのようなものなのでしょうか。
労働組合の基本的な役割
労働組合とは、働く人たちが集まって「給料、労働時間、休日」などの労働条件を良くするために、会社側と対等に話し合う(交渉する)ための組織です。
芸能人は「労働者」ではなく「個人事業主」

ここが一番のポイントです。日本の多くの芸能人や俳優は、芸能事務所に雇われている「会社員」ではありません。法律上は「個人事業主(フリーランス)」という扱いになります。
そのため、これまでは日本の法律(労働基準法など)で十分に守られておらず、以下のようなトラブルが起きても、タレント個人が泣き寝入りせざるを得ないケースが少なくありませんでした。
- 労働時間の超過: 24時間以上の連続撮影や、過酷なスケジュール
- ギャラの未払い・低賃金: 契約内容が不透明で、適切な報酬が支払われない
- 事務所とのトラブル: 「辞めるなら数年間は芸能活動をさせない」といった不当な圧力
芸能人の労働組合とは、こうした弱い立場になりがちなタレントや俳優たちが団結し、業界全体に対して「もっと働きやすい環境を作ろう!」と声を上げるための組織なのです。
現代の課題:タレントを守る盾としての役割
過酷な労働環境だけでなく、ネット上の誹謗中傷やデマ(名誉毀損)からタレントをどう守るかも、現代の大きな課題です。
実際に、小栗旬さんが社長を務めるトライストーン・エンタテイメントでも、過去に所属タレントが暴露系ユーチューバーを中心としたネット上の心ない投稿の標的にされた事例がありました。
2022年、インターネット上でトライストーン所属の俳優たちに対する、名誉を傷つけるような事実無根の投稿が複数なされる事態が起きました。これに対し、事務所側は公式ホームページで「虚偽の投稿を決して容認できません」と法的措置をとる強い声明を発表し、タレントを守る姿勢を示しました。
しかし、こういったバッシングへの法的続きは、事務所やタレント個人にとって精神的にも金銭的にも大きな負担になります。だからこそ小栗さんは、一つの事務所だけで戦うのではなく、「業界全体の組合」という大きな盾を作り、共通のガイドラインや相談窓口でタレント全員を守る仕組みが必要だと考えているのです。
実は日本にもある?「日本俳優連合(日俳連)」の役割と知られざる限界
「日本には俳優を守る組織が一つもないの?」というと、実はそうではありません。日本には約2,600名以上の俳優や声優が加入している「協同組合 日本俳優連合(通称:日俳連/にっぱいれん)」という組織がすでに存在します。
では、この日俳連はどのような役割を持っていて、なぜ小栗旬さんはそこがあるにもかかわらず、新しく「労働組合」を作ろうとしているのでしょうか。そこには、組織の仕組みゆえの大きな限界があります。
日俳連が果たしてきた「役割」
日俳連は、法律(中小企業等協同組合法)に基づいた「協同組合」です。タレント個人では難しい、NHKや民放、映画製作会社などとの「団体交渉」を行う権利を持っています。
- 最低出演条件(ギャラ)の保証
- 映像や音声の二次使用(再放送や配信など)に関するルールの策定
- 現場での安全対策の推進
特にアニメや吹き替えなどの「声優業界」においては、日俳連が定めたランク制度がギャラの基準になっており、タレントの生活や権利を最低限守るためにとても重要な役割を担ってきました。
新たな課題に直面する「日俳連の限界」とは?

しかし、現在のエンタメ界の急激な変化の中で、日俳連だけでは守りきれない「3つの限界」が浮き彫りになっています。
限界①:法的な「ストライキ権(団体行動権)」の壁
日俳連はあくまで「協同組合(個人事業主の集まり)」であり、会社員が作る「労働組合」とは法律が異なります。過去に出演拒否などの運動を行った歴史はあるものの、ハリウッドのように「条件が改善されるまで、業界全体の撮影を100日間完全にストップさせる」といった、法的・組織的に強力なストライキを実行することは極めて困難です。
限界②:映画俳優や実写現場での影響力
日俳連は声優や舞台俳優の加入率が高く、ルールが浸透している一方、テレビドラマや映画をメインに活躍するトップクラスの「映像俳優」の加入率はそれほど高くないのが現状です。そのため、過酷な映画の撮影現場を根本から変えるまでの強制力を持てていません。
限界③:著作権法による権利の制限
現在の日本の著作権法では、映画や映像における俳優の権利が大幅に制限されています。日俳連も法律の改善を求めて国への働きかけを続けていますが、法改正を動かすほどの政治的なパワー(圧力)を爆発的に生み出すには至っていません。
だからこそ、小栗旬は「労働組合」を目指す
既存の「日俳連」という枠組みだけでは、古い業界の慣習や、Netflixなどのグローバル配信、AIの登場といった最新の波に対抗しきれない。
だからこそ小栗旬さんは、法的に最強の交渉権と団結力を持つ「ハリウッド基準の労働組合(ユニオン)」を、映像俳優たちの手で一から作り上げる必要があると確信し、自ら先頭に立って奔走しているのです。
お隣の国はどう?「韓国エンタメ界」での労働組合の実情
世界を席巻している「韓流ドラマ」や「K-POP」を擁する韓国では、芸能人の労働組合はどうなっているのでしょうか? 実は、韓国でもタレントの権利を守るための動きが激化しています。
歴史のある「俳優の労働組合」

韓国には「韓国放送演技者労働組合(韓延労)」という、俳優やタレントが加入する歴史ある組合が存在します。
この組合は非常にパワフルで、テレビ局(KBSなど)と出演料や現場の処遇改善について直接交渉を行い、団体協約を結ぶほどの力を持っています。制作会社による出演料の未払い問題が発生した際にも、組合が先頭に立って抗議を行い、タレントのギャラを回収する役割を果たしています。
K-POP界でも「アイドル労働組合」の動き?

さらに近年では、俳優だけでなく「K-POPアイドル」の労働組合を作ろうという歴史的な動きも始まっています。元人気グループ「TEEN TOP」のメンバーらが中心となり、「アイドルを含めた大衆文化芸術人の権益を保護する団体」の設立申請を行うなど、過酷な練習生時代や厳格な契約から若い才能を守るための基盤作りが急ピッチで進められています。
韓国のエンタメが世界で強いのは、こうした「標準契約書」の義務化や組合の交渉によって、クリエイターや出演者の権利が日本以上に整備されつつあることも大きな理由の一つなのです。
世界との差!2023年に起きた「ハリウッドの歴史的ストライキ」

さらに海の向こう、アメリカ(ハリウッド)には、「SAG-AFTRA(映画俳優組合)」という100年以上前から続く非常に強力な労働組合があります。
その強さを証明したのが、2023年に起きたハリウッドの歴史的なストライキです。
ハリウッドの俳優組合が中心となり、約118日間にわたって全ての撮影をストップさせました。彼らが仕事を放棄してまで戦った理由は、時代に合わせた権利を守るためです。
- AI(人工知能)の利用制限: 「俳優の顔や声をAIに勝手に学習させてCGで使われるのを防ぐ」対策
- ネット配信の適正な報酬: Netflixなどの配信ビジネスにおける、適正なギャラの分配
このストライキには、メリル・ストリープやジェニファー・ローレンスといった超大物ハリウッドスターたちも賛同しました。
結果として、組合側はディズニーやNetflixなどの巨大スタジオから「報酬の引き上げ」や「AIの利用制限」という大きな勝ち取り(合意)を収めたのです。
ハリウッドや韓国のように「組合の力があるからこそ、時代に合わせたタレントの権利を守れる」という現実があり、小栗旬さんはこの世界基準の仕組みを日本にも取り入れたいと考えているのです。
【筆者の体験談】かつて私も介護施設で労働組合を作った一人でした

実は、この記事を書いている私自身も、過去20年以上前に介護施設で労働組合を立ち上げ、初代の組合長を務めた経験があります。
当時、私は自分の施設だけでなく、他の福祉施設とも横断的につながり、横の連携を強めていきました。「働く仲間たちの過酷な労働環境を少しでも良くしたい」「現場の声をしっかり届けたい」という一心で、経営者側と何度も対等な交渉を重ねていきました。
理想と、現実の「壁」

労働組合という正当な権利を使い、現場の環境は少しずつ改善の兆しを見せました。しかし、経営者側にとって、権利を主張してくる組合長(私)の存在は、煙たい存在だったのかもしれません。
結果として、私は最終的に窓際部署へと追いやられ、精神的にも追い詰められて離職せざるを得ない状況になりました。
組織を変えようと先頭に立つ人間には、想像以上の風当たりや、目に見えないペナルティが課せられるのが、日本の組織のリアルな現実です。
だからこそ、私は小栗旬さんのニュースを見たとき、他人事とは思えませんでした。
一俳優であり、そして一事務所の社長である彼が、どれほどの覚悟を持って「労働組合の設立」を叫んでいるか。そして、どれほど大きなリスクやプレッシャーと戦っているかが、自分の痛みを伴う経験を通して痛いほどよく分かるのです。
なぜ小栗旬は「労働組合」の設立に奔走するのか?

小栗旬さんが20代の頃から危機感を抱き、本気で動くのには大きな理由があります。
理由①:若手俳優たちの命と心を守るため
日本のドラマや映画の過酷な撮影スケジュールで、若い俳優たち、後輩たちがすり減って潰れていくのを防ぎたいという強い想いがあった。
理由②:海外(ハリウッドや韓国)との圧倒的な差
先述した海外のようにルールで守られた環境を作り、「日本から世界に通用する作品を作るためにも、まずは足元の労働環境を整えるべきだ」と考えている。
理由③:社長という「経営者側の視点」を得たから
2023年に大手芸能事務所の社長に就任したことで、一俳優としての発言に留まらず、業界全体のルールを変えるための現実的なパワーと責任感を持ってプロジェクトを推進している。
ただ、最近は経営者の立場も理解した上で、より現実的かつ効果的な方法を模索されているようです。
まとめ:小栗旬が挑む「芸能界の働き方改革」を、当事者として応援したい

一見、華やかに見える芸能界ですが、その裏側には「個人事業主ゆえの立場の弱さ」や「ネットの誹謗中傷」というリアルな問題が隠されています。
小栗旬さんが目指す「芸能人の労働組合」とは、どこかと敵対するためのものではなく、「俳優たちが安心して、長く、良い作品を作り続けられる環境を作るための組織」です。
私自身、かつて介護の現場で労働組合を立ち上げ、最終的に組織から追いやられるという苦い経験をしました。だからこそ、日本の古い組織や既得権益を変えようと先頭に立つことが、どれほど孤独で、恐ろしく、エネルギーのいることかが分かります。
ましてや、知名度のあるトップスターであり、一芸能事務所の社長でもある小栗旬さんが受けるプレッシャーは、想像を絶するものがあるはずです。
日本、韓国、そしてハリウッド。世界のエンタメ界が変化する中で、日本の芸能界がどう変わっていくのか。
リスクを背負ってでも「仲間と未来のために」挑戦を続ける小栗社長の姿は、芸能界だけでなく、今どこかの現場で理不尽な環境と戦っているすべての人に勇気を与えてくれるはずです。
いちファンとして、そしてかつて同じ志を持った一人の人間として、彼らが創り出すこれからの新しいエンターテインメントの形を、心から応援し、見守っていきたいと思います!
マロン
小栗さんの男らしい取り組みを今後も応援していきたいと思います!
今回は、「芸能人の労働組合」についてご紹介しました。最後まで御覧いただき、ありがとうございました!


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